世界と日本の教育を比較。インターナショナルスクールカリキュラムの特徴と違い

インターナショナルスクールとは

近年、グローバル化が進む中で、子どもたちの教育に対する考え方も大きく変わってきています。日本の教育制度だけでなく、世界の教育の流れを知ることは、これからの時代を生きる子どもたちにとって大切なことかもしれません。特に、インターナショナルスクールのカリキュラムは、従来の日本の教育とは異なる特徴を持っています。本記事では、世界と日本の教育を比較しながら、インターナショナルスクールのカリキュラムの特徴と違いについて詳しく見ていきましょう。

私自身、カナダでの5年間の生活経験があり、現在7年生の息子がインターナショナルスクールに通っています。学校の先生方や多国籍の保護者、職場での様々な国の同僚との交流から得た知見をもとに、実体験を交えてお話しします。

1. 教育の目的と学習方法の違い

まず、日本と世界の教育で大きく異なるのは、「何のために学ぶのか」という教育の目的と、「どのように学ぶのか」という学習方法です。これらの違いは、それぞれの国や地域の文化や歴史に根ざしています。

1-1. 知識重視 vs 思考力重視

日本の教育では、古くから「知識をたくさん覚える」ことに重きが置かれてきました。教科書に書かれた内容を正確に覚え、テストで再現することが「良い学び」とされることが多いです。一方、多くのインターナショナルスクールでは、知識そのものよりも「その知識を使って何ができるか」を重視します。

例えば、歴史の授業では、日本の学校では年号や出来事を覚えることが中心になりがちですが、インターナショナルスクールでは「なぜその出来事が起きたのか」「現代にどのような影響を与えているか」を考えることに時間をかけます。息子の学校では、歴史上の人物になりきってディベートをしたり、当時の新聞を作ったりする活動が多いです。

この違いは、テストの形にも表れています。日本の学校のテストは「正解が一つ」の問題が多いのに対し、インターナショナルスクールでは「自分の考えを述べる」問題が多く出題されます。正解が一つではなく、考え方や説明の仕方が評価されるのです。

1-2. 一斉授業 vs プロジェクト型学習

日本の学校では、先生が前に立って説明し、生徒全員が同じ内容を同じペースで学ぶ「一斉授業」が主流です。これは、多くの生徒に同じ内容を効率よく教えるには適した方法です。

対して、インターナショナルスクールでは「プロジェクト型学習」が多く取り入れられています。生徒たちがグループで課題に取り組み、自分たちで調べ、考え、まとめて発表するという流れです。息子のクラスでは、「持続可能な未来のための都市計画」というプロジェクトで、実際に模型を作り、なぜその設計にしたのかをクラスメイトの前でプレゼンテーションしていました。

プロジェクト型学習では、一人ひとりの興味や得意分野を活かしながら学ぶことができます。また、調べる力、まとめる力、発表する力など、様々な力を同時に伸ばすことができるのが特徴です。

1-3. 競争 vs 協働

日本の教育では、テストの点数や順位など、「他の人と比べてどうか」という競争の要素が強い面があります。特に中学や高校では、定期テスト後に順位が発表されることも珍しくありません。

一方、インターナショナルスクールでは「協働」が重視されます。「一人ではできないことも、みんなで力を合わせればできる」という考え方が基本にあり、他者と協力しながら学ぶ機会が多く設けられています。

息子の学校では、科学の実験や社会科のプロジェクトなど、ほとんどの授業でグループワークが行われています。時には意見が合わないこともありますが、そういった場面こそが「違いを認め合い、折り合いをつける力」を育む大切な機会とされています。

この違いは、OECDラーニングコンパス2030でも指摘されているように、これからの時代に必要な「協働的問題解決能力」の育成につながっています。

2. カリキュラムの内容と評価方法

次に、日本の学校とインターナショナルスクールのカリキュラム内容と評価方法の違いについて見ていきましょう。

2-1. 教科の枠組みと横断的な学び

日本の学校では、国語、算数(数学)、理科、社会、英語などの教科がはっきりと分かれており、それぞれ別々の時間に学びます。教科書も教科ごとに別々のものを使用します。

インターナショナルスクールでは、教科の枠を超えた「横断的な学び」が多く取り入れられています。例えば、環境問題について学ぶ際には、科学的な側面(理科)、社会的な影響(社会)、データの分析(数学)、レポートの作成(言語)など、様々な角度から総合的に学びます。

息子の学校で行われた「水の循環」というプロジェクトでは、科学の授業で水の性質や循環の仕組みを学び、社会科では世界の水問題について調べ、数学では水の使用量のデータを分析し、英語の授業ではそれらをまとめたレポートを書きました。このように、一つのテーマを多角的に掘り下げることで、より深い理解につながるのです。

この横断的な学びは、国際バカロレア(IB)のプログラムでも重視されており、現実世界の複雑な問題に対応できる力を育むとされています。

2-2. 標準テスト vs 多様な評価方法

日本の学校では、学期末の定期テストや、全国学力テストなど、「紙と鉛筆による標準テスト」が評価の中心になることが多いです。こうしたテストでは、正確な知識の再現や、決められた解法で問題を解く力が測られます。

インターナショナルスクールでは、テストだけでなく様々な評価方法が使われます。プロジェクトの成果物、プレゼンテーション、ポートフォリオ(学習の記録)、自己評価、相互評価など、多角的に生徒の成長を見ています。

息子の学校では、数学のテストもありますが、同時に「数学を使って実生活の問題を解決する」というプロジェクトの評価も重要視されています。例えば、学校の食堂でのフードロスを減らすために、アンケートを取ってデータを分析し、解決策を提案するといった活動です。

この多様な評価方法は、生徒の様々な能力や特性を公平に評価できるという利点があります。テストが苦手でも、プレゼンテーションやクリエイティブな表現が得意な子どもも、自分の強みを発揮できるのです。

2-3. 暗記重視 vs 探究重視

日本の教育では、特に受験を意識する中学・高校段階になると、教科書や問題集の内容を暗記することに多くの時間が費やされます。これは、大学入試などのテストで高得点を取るためには効果的な方法です。

インターナショナルスクールでは、「探究(インクワイアリー)」に重点が置かれています。「なぜ」「どうして」という疑問を大切にし、自分で調べ、考え、答えを見つけていくプロセスを重視します。

例えば、理科の授業では、日本の学校だと「植物の光合成の仕組み」を教科書から学ぶことが多いですが、インターナショナルスクールでは「植物は光の量によってどのように成長が変わるか」という問いを立て、実際に実験して確かめるといった活動が行われます。

この探究的な学びは、ケンブリッジ国際カリキュラムでも中心的な教育アプローチとなっており、子どもたちの好奇心と探究心を育てるのに効果的とされています。

3. グローバル社会に向けた教育の違い

最後に、グローバル社会を生きるために必要な力をどのように育てているのか、日本の教育とインターナショナルスクールの違いを見ていきましょう。

3-1. 英語教育 vs 英語で学ぶ環境

日本の学校での英語教育は、主に「英語という科目を学ぶ」ことに焦点が当てられています。文法や単語を覚え、テストで高得点を取ることが目標になりがちです。近年は会話力も重視されるようになってきましたが、まだ「英語を使う」機会は限られています。

インターナショナルスクールでは、「英語で学ぶ」環境が整っています。英語は学ぶ対象というよりも、数学や理科、社会などを学ぶための道具です。日常的に英語を使うことで、自然と言語力が身についていきます。

実は、英語は日本語に比べると文法や発音のルールがシンプルな言語です。日本語をマスターしている子どもたちなら、英語を習得する素質は十分にあります。必要なのは、英語を実際に使う環境です。息子も最初は英語に苦労していましたが、日々の学校生活の中で自然と英語が身についていきました。

この「英語で学ぶ」アプローチは、CLIL(Content and Language Integrated Learning)と呼ばれ、効果的な言語習得法として世界中で注目されています。

3-2. 文化の理解と多様性の尊重

日本の学校でも国際理解教育は行われていますが、どうしても「日本と外国」という二項対立的な見方になりがちです。また、教科書や資料を通じた間接的な学びが中心となります。

インターナショナルスクールでは、様々な国籍や文化背景を持つ生徒や教師が日常的に交流しています。異なる文化や考え方に触れることが日常の一部であり、自然と多様性を受け入れる姿勢が育まれます。

息子のクラスには10カ国以上の国籍の子どもたちがいます。「国際デー」では各自の文化を紹介し合ったり、宗教の授業では様々な信仰について学んだりと、多様性を肌で感じる機会が豊富です。食べ物の好みや休日の過ごし方など、何気ない会話の中にも文化の違いが表れ、それが「当たり前」として受け止められています。

このような環境は、将来グローバルに活躍するために欠かせない「異文化間コミュニケーション能力」を自然と育みます。

3-3. デジタルリテラシーとテクノロジーの活用

日本の学校でもICT教育は進められていますが、「パソコンの使い方を学ぶ」という位置づけが強く、特別な授業時間が設けられていることが多いです。

インターナショナルスクールでは、テクノロジーは特別なものではなく、学びのツールとして日常的に活用されています。調べ学習にタブレットを使ったり、プレゼンテーションソフトでまとめたり、オンラインでクラスメイトと共同作業をしたりといった活動が当たり前のように行われています。

息子の学校では、小学校の段階からプログラミングの基礎を学び、中学では自分たちでアプリを作るプロジェクトも行われています。また、情報の信頼性を判断する方法や、インターネット上のマナーなど、デジタル社会を生きるための「デジタル・シティズンシップ」も重要な学習内容とされています。

この違いは、21世紀型スキルと呼ばれる、これからの時代に必要な能力の育成につながっています。テクノロジーを単に使えるだけでなく、創造的に活用できる力が求められているのです。

まとめ:どちらが良い悪いではなく、選択肢の一つとして

ここまで、日本の教育とインターナショナルスクールの違いを見てきましたが、どちらが「良い」「悪い」というわけではありません。大切なのは、子どもたちの個性や将来の展望に合わせて、最適な教育環境を選ぶことです。

日本の教育には日本の教育の良さがあります。基礎学力の定着や、「みんなで同じことをやり遂げる」という協調性の育成など、日本社会で大切にされてきた価値観が反映されています。一方、インターナショナルスクールは、グローバル社会で活躍するために必要な思考力や表現力、多様性への理解などを重視しています。

我が家は、息子にとって最適な選択としてインターナショナルスクールを選びましたが、それは日本の教育を否定しているわけではありません。子どもの特性や家庭の状況、将来の展望など、様々な要素を考慮した上での選択です。

これからの子どもたちは、ますますグローバル化が進む社会で生きていくことになります。そのためには、英語力だけでなく、異なる文化や考え方を理解し、多様な人々と協働できる力が必要です。インターナショナルスクールか日本の学校か、という二者択一ではなく、それぞれの良さを取り入れながら、子どもたちにとって最良の教育を考えていくことが大切なのではないでしょうか。

最後に、英語教育について一言。日本の学校の英語教育は、文法や単語の暗記が中心になりがちで、「英語は難しい」というイメージを植え付けてしまっている面があります。しかし実際には、話す環境さえあれば、今英語が苦手だと感じている人でも十分に話せるようになります。英語ができることは特別なことではなく、人間なら誰でも持っている言語習得の能力を活かせば自然なことなのです。日本語という複雑な言語をマスターしている時点で、皆さんには英語を話す素質が十分にあることを忘れないでください。

この記事が、教育選択の参考になれば幸いです。様々な可能性を探りながら、お子さんにとって最良の教育環境を見つけていただければと思います。

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