世界はどんどん小さくなっています。今日、多くの仕事や生活の場面で、違う国の人たちと一緒に何かをする力が大切になっています。そんな中で、子どもの教育をどうするかは多くの親にとって大きな関心事です。インターナショナルスクールは、そんな未来に向けて子どもたちを育てる選択肢の一つとして注目されています。この記事では、インターナショナルスクールの教育の考え方や特徴について深く見ていきましょう。
インターナショナルスクールとは、世界中の子どもたちが一緒に学び、多くの場合英語を主な言葉として使う学校です。ただ英語を学ぶ場所ではなく、英語で様々なことを学ぶ場所です。日本語より英語の方が簡単だと言われることもありますが、実際に日本語を話せる人なら、英語を話すための土台はすでに持っています。大切なのは、使える環境があるかどうかなのです。
1. インターナショナルスクールの教育理念 – 世界に開かれた心を育てる
インターナショナルスクールでは、子どもたちがこれからの世界で活躍できるよう、特別な考え方で教育を行っています。その中心となる考え方をいくつか見ていきましょう。
1-1. 多様性を認め合う心を育てる
インターナショナルスクールの教室には、様々な国から来た子どもたちがいます。肌の色、言葉、食べ物、考え方など、多くの違いがあります。そんな環境で毎日を過ごすことで、子どもたちは自然と「違い」を怖がらず、むしろそれを面白いと思える心を育てます。
私の息子のクラスには15人の子どもがいますが、その中には8つの国から来た子どもたちがいます。給食の時間には、お互いのお弁当を見せ合って「それ何?おいしそう!」と言い合っています。また、行事では、それぞれの国の遊びや歌を紹介し合う「文化交流デー」があり、子どもたちは他の国の文化を体験できます。このように、日々の生活の中で多様性を当たり前のものとして受け入れる心が育まれています。
教育研究者のハワード・ガードナーは、「異なる文化的背景を持つ人々との協力は、21世紀に必要な最も重要なスキルの一つだ」と述べています。インターナショナルスクールでは、この力を小さい頃から自然に身につけられる環境があるのです。
1-2. 問いかける力と考える力を育てる
多くのインターナショナルスクールでは、「教える」より「考えさせる」教育を大切にしています。先生は答えをすぐに教えるのではなく、子どもたち自身が問いを立て、調べ、考え、答えを見つける手助けをします。
例えば、私の息子のクラスでは「水」についての学習で、最初に「水について知りたいことは何?」と聞かれ、子どもたちが出した疑問を中心に学習が進みました。「なぜ海の水は塩からいの?」「水はどこから来るの?」など、子どもたちの疑問が学びの出発点になります。そして、実験や調査を通じて、答えを自分たちで見つけていくのです。
国際バカロレア(IB)の教育プログラムを取り入れている学校では、この「探究型学習」が特に重視されています。カナダの教育専門家であるジョン・ヘンリー・ニューマンは「教育の目的は、子どもたちが自分で考え、判断する力を養うことである」と言っていますが、インターナショナルスクールではまさにこの考えが実践されています。
1-3. 世界の問題に目を向ける姿勢を育てる
インターナショナルスクールでは、自分の国だけでなく、世界全体の問題にも目を向ける姿勢を育てます。環境問題、貧困、平和など、地球規模の課題について考え、「自分にできることは何か」を考える機会が多くあります。
私の息子の学校では、毎年「地球週間」という行事があります。その週は、環境問題について学び、実際に学校や家庭でできる環境保護の取り組みを考えて実行します。去年は、プラスチックごみを減らすための「エコバッグ作り」や、食べ残しを減らす「残さず食べよう週間」などの活動がありました。
また、多くのインターナショナルスクールでは、国連の「持続可能な開発目標(SDGs)」を教育に取り入れています。子どもたちは、これらの目標について学び、自分たちの生活とのつながりを考えます。「国際バカロレアとSDGsの関連」によると、世界市民としての意識を育てることが、将来のリーダーを育てる上で非常に重要だと言われています。
2. インターナショナルスクールの教育方法 – 学びの形が違う
インターナショナルスクールでは、教え方や学び方が一般的な日本の学校とは少し違います。どのような特徴があるのか、詳しく見ていきましょう。
2-1. 対話と協力を重視した学び
インターナショナルスクールの教室では、子どもたちが静かに座って先生の話を聞くだけではなく、活発に話し合い、一緒に考え、協力して問題を解決する活動が多くあります。「グループワーク」や「ペアワーク」と呼ばれる学習方法が多く取り入れられています。
私の息子のクラスでは、算数の時間に「どうやったらこの問題が解けるか」をまず子どもたち同士で話し合います。そして、違う解き方を見つけた子どもたちがそれぞれの方法を発表し、クラス全体でどの方法が一番よいか考えます。このように、答えを出すだけでなく、「考え方」や「伝え方」も学ぶのです。
教育研究者のルシェル・セイラーは、「協力して学ぶことで、より深い理解につながる」と述べています。一人で考えるより、みんなで考えることで、様々な見方や考え方に触れ、より深く学ぶことができるのです。
2-2. 体験を通じた学び
インターナショナルスクールでは、本やインターネットで調べるだけでなく、実際に見たり、触ったり、体験したりする「体験学習」が重視されています。教室の外に出て学ぶ機会も多くあります。
例えば、息子の学校では、社会の授業で地域の歴史を学ぶとき、博物館に行ったり、古い建物を見学したりします。また、理科で植物について学ぶときは、実際に学校の庭で植物を育て、その成長の様子を観察します。このように、実際の体験を通じて学ぶことで、知識が深まり、記憶にも残りやすくなります。
アメリカの教育者ジョン・デューイは、「教育は経験によって形作られる」と述べ、体験を通じた学びの大切さを説いています。インターナショナルスクールでは、この考えを実践し、子どもたちが五感を使って学べる環境を整えています。
2-3. テクノロジーを活用した学び
多くのインターナショナルスクールでは、最新のテクノロジーを積極的に活用した教育が行われています。タブレットやコンピュータを使った調査や発表、プログラミングの学習など、これからの時代に必要なICTスキルを身につける機会が豊富にあります。
息子の学校では、3年生からタブレットを使った学習が始まります。調べ学習では、インターネットで情報を集め、プレゼンテーションソフトを使って発表します。また、プログラミングの授業では、簡単なゲームやアニメーションを作る活動があります。
しかし、テクノロジーはあくまで道具であり、それを使って何を学ぶかが大切です。イギリスの教育機関OECDの報告書「創造的・批判的思考力の育成」によると、テクノロジーを使うことで情報へのアクセスが容易になり、学びの幅が広がるとされています。インターナショナルスクールでは、このようなテクノロジーの利点を生かした教育が行われているのです。
3. インターナショナルスクールの学校生活 – 多彩な経験の場
インターナショナルスクールでの子どもたちの日々は、勉強だけでなく、様々な活動や行事で彩られています。どのような学校生活が送られているのか、具体的に見ていきましょう。
3-1. 多様な行事と文化体験
インターナショナルスクールでは、様々な国の行事や祭りを取り入れた学校行事があります。ハロウィーン、クリスマス、チャイニーズニューイヤー、ディワリ(インドの光の祭り)など、世界各国の文化的な行事を体験する機会があります。また、日本にある学校なら、七夕や節分などの日本の行事も大切にしています。
息子の学校では、毎年「インターナショナルデー」という行事があり、各国の料理や衣装、音楽、踊りなどが紹介されます。子どもたちは自分のルーツとなる国の文化を紹介したり、友達の国の文化を体験したりします。このような行事を通じて、子どもたちは様々な文化に触れ、世界の多様性を肌で感じることができます。
カナダの多文化教育研究者ジェームズ・バンクスは、「多文化的な経験は、子どもたちの世界観を広げる」と述べています。インターナショナルスクールでの多様な文化体験は、子どもたちの心を開き、偏見のない世界観を育てる助けとなっているのです。
3-2. 課外活動と特別プログラム
多くのインターナショナルスクールでは、授業の後に様々な課外活動(アフタースクールプログラム)が用意されています。スポーツ、音楽、芸術、科学実験、外国語など、子どもたちの興味や関心に合わせて選べる活動が豊富にあります。
息子は週に2回、放課後のサッカークラブに参加しています。そこでは、様々な学年の子どもたちが一緒に活動し、年上の子が年下の子に教えるなど、学年を超えた交流があります。また、外部コーチが指導に来ることもあり、専門的な技術を学ぶ機会もあります。
また、多くのインターナショナルスクールでは、夏休みなどの長期休暇中に特別なプログラムやキャンプを実施しています。例えば、「サマーキャンプ」では、普段の授業ではできないような特別な活動や遠足があります。イギリスの教育者セシル・レディは、「課外活動は子どもたちの社会性や自主性を育てる重要な機会である」と述べていますが、インターナショナルスクールではそのような機会が豊富に用意されています。
3-3. コミュニティとのつながり
インターナショナルスクールは、ただの学校ではなく、様々な国の人々が集まる「コミュニティ」でもあります。子どもだけでなく、保護者も含めた交流の場があり、学校を中心としたつながりが形成されています。
多くの学校には「PTA」や「ペアレンツアソシエーション」と呼ばれる保護者の組織があり、学校行事のサポートや親同士の交流活動を行っています。私も「フレンドシップコミッティ」というグループに参加していて、新しく学校に来た家族のサポートや、保護者向けのイベント企画を行っています。
このようなコミュニティがあることで、子どもたちは学校だけでなく、様々な場面で多様な文化に触れる機会があります。また、親にとっても、異なる文化や考え方を持つ人々と交流できる貴重な場となっています。オーストラリアの教育専門家ブライアン・キャンドラーは、「学校と家庭の強いつながりが子どもの成長を支える」と述べていますが、インターナショナルスクールではこのつながりが特に大切にされています。
インターナショナルスクールで育まれる力 – 未来を生きるために
ここまで見てきたように、インターナショナルスクールでは、単に英語を学ぶだけでなく、これからの世界で必要とされる様々な力が育まれています。多様性を受け入れる心、自ら考え問いかける力、協力して問題を解決する力など、これらはすべて「グローバル人材」として世界で活躍するために不可欠な要素です。
英語を話せることはすごいことではなく、適切な環境があれば誰でも身につけられる自然なことです。実際、日本語という複雑な言語を話せる日本人の子どもたちには、十分な素質があります。大切なのは、その力を引き出し、世界とつながるきっかけを作ることではないでしょうか。
インターナショナルスクールは、そのようなきっかけを与えてくれる場の一つです。もちろん、すべての子どもにとってインターナショナルスクールが最適な選択というわけではありません。それぞれの子どもの個性や家庭の状況、希望に合わせて、最適な教育環境を選ぶことが大切です。
この記事が、インターナショナルスクールについて知りたい方々の参考になれば幸いです。子どもたちが世界に開かれた心を持ち、様々な人々と協力しながら、明るい未来を作っていけることを願っています。
「世界は広い。そして、その広い世界であなたの子どもが活躍できるように」
コメント