ケンブリッジ認定校と一般的なインターナショナルスクールの違いは?

ケンブリッジ・インターナショナル・プログラム

世界中で子どもたちに国際教育を与えたいと思う親が増えています。日本でも、外国の教育を受けられる学校として「ケンブリッジ認定校」と「インターナショナルスクール」という二つの選択肢があります。どちらも外国の教え方で学べる学校ですが、実は大きな違いがあるのです。

私の息子は国際バカロレア認定校に通っていますが、最初は違いがよく分かりませんでした。多くの家族が同じような疑問を持っているでしょう。この記事では、両方の学校の特徴と違いについて、世界の教育事情を踏まえながら分かりやすく説明します。

英語で学ぶことは難しいことではありません。日本語を話せる子どもなら誰でも、正しい環境があれば英語も自然に身につきます。実際、日本語の方が文法や漢字など複雑な要素が多いため、すでに日本語をマスターしている子どもたちは英語を学ぶ十分な能力を持っています。

教育の基本方針と認定制度の違い

まず最初に、ケンブリッジ認定校と一般的なインターナショナルスクールの教育に対する考え方と、それぞれの学校がどのような組織から認められているかを見てみましょう。

ケンブリッジ認定校の教育理念と認定基準

ケンブリッジ認定校は、イギリスのケンブリッジ大学の一部門であるケンブリッジ国際教育機構(Cambridge Assessment International Education、略してCAIE)によって認められた学校です。世界160か国以上に10,000校を超える認定校があり、厳しい基準を満たした学校だけが認定されます[1]

ケンブリッジ認定校の最も大きな特徴は、イギリスの教育制度に基づいた明確な教育課程を持っていることです。イギリスでは長い歴史の中で培われた教育方法があり、その伝統と高い水準を世界中に広げることを目的としています。

ケンブリッジ認定校になるためには、教師の質、教室の環境、教える内容など細かな点まで審査を受けます。また、定期的に再審査もあるため、常に高い水準を保つ必要があります[2]

「私たちは子どもたちが知識を深く理解し、世界中どこでも通用する考え方を身につけられるよう教育します」というのがケンブリッジ教育の基本理念です。単に事実を暗記するのではなく、なぜそうなるのかを考え、自分で問題を解決する力を育てることを大切にしています。

一般的なインターナショナルスクールの多様性と特徴

一方、「インターナショナルスクール」という言葉は、実はとても広い意味を持っています。国ごとに定義が異なり、日本では「各種学校」や「学校法人」として認められているものから、そうでないものまで様々です。

インターナショナルスクールの多くは、国際バカロレア(IB)やアメリカのカリキュラム、ヨーロッパの教育制度など、様々な教育方法を取り入れています。学校によって教え方や内容が大きく異なるのが特徴です[3]

例えば、国際バカロレア認定校は、スイスに本部がある国際バカロレア機構(IBO)の基準に従い、「探究心」「知識」「思考力」「コミュニケーション能力」「誠実さ」「視野の広さ」などを重視した教育を行います。世界中で共通の教育内容を提供することを目指しています[4]

アメリカンスクールは、アメリカの教育制度に基づいており、クリエイティブな考え方や自己表現を重視する傾向があります。フランス系やドイツ系など、他の国の教育制度に基づく学校もあります。

教育の目標と学校文化の違い

ケンブリッジ認定校とインターナショナルスクールでは、教育の目標にも違いがあります。

ケンブリッジ認定校は、学問的な厳しさと体系的な知識の習得を特に重視します。イギリスの教育制度は伝統的に「学問」を大切にし、試験によって学力を測ることを重視してきました。そのため、ケンブリッジ認定校では、定期的なテストや試験が多く、結果を重視する傾向があります[5]

一方、多くのインターナショナルスクール、特に国際バカロレア認定校では、知識だけでなく「全人教育」を目指しています。学問はもちろん大切ですが、それと同時に、社会性、リーダーシップ、創造性、国際的な視野なども育てることを重視しています。

オーストラリアの教育専門家によると、「ケンブリッジシステムは結果重視、IBは過程重視と言えるでしょう。どちらが良いということではなく、お子さんの学び方や将来の目標に合わせて選ぶことが大切です」とのことです[6]

学校の雰囲気も異なります。ケンブリッジ認定校は比較的フォーマルで規律を重んじる傾向があり、制服がある学校が多いです。インターナショナルスクールは学校によって様々ですが、より自由な雰囲気の学校も多く見られます。

カリキュラムと学習内容の特徴

次に、実際に子どもたちが学ぶ内容や方法の違いを見ていきましょう。

ケンブリッジカリキュラムの構成と特徴

ケンブリッジ認定校では、ケンブリッジインターナショナルカリキュラムという教育内容に沿って学びます。このカリキュラムは年齢に応じて段階が分かれています[7]

・ケンブリッジプライマリー(5〜11歳):基礎的な学習スキルを身につける時期

・ケンブリッジロワーセカンダリー(11〜14歳):より深い学習へと進む時期

・ケンブリッジアッパーセカンダリー(14〜16歳):IGCSE(国際中等教育修了資格)の取得を目指す時期

・ケンブリッジアドバンスト(16〜19歳):Aレベル試験の準備をする時期

特に重要なのは、14〜16歳の時期に受けるIGCSE(International General Certificate of Secondary Education)と、16〜19歳の時期に受けるAレベル試験です。これらはイギリスの教育制度における重要な資格試験で、世界中の大学で認められています。

IGCSEでは、英語、数学、科学(物理・化学・生物)などの主要科目に加え、歴史、地理、外国語、芸術、ICT(情報技術)など様々な科目から選択して学びます。一般的に8〜12科目を選んで学習し、それぞれの科目で試験を受けます[8]

Aレベルは大学入学のための試験で、3〜4科目を深く学びます。例えば、医学部を目指す生徒は化学・生物・数学を、工学部を目指す生徒は数学・物理・化学を選ぶといった具合です。

カナダの教育研究者は「ケンブリッジカリキュラムの強みは、科目ごとに深く学ぶ点です。特に科学や数学では、理論だけでなく実験や応用も重視されています」と評価しています[9]

一般的なインターナショナルスクールのカリキュラム多様性

インターナショナルスクールのカリキュラムは学校によって大きく異なります。

国際バカロレア(IB)認定校では、年齢に応じて4つのプログラムがあります:

・PYP(初等教育プログラム、3〜12歳)

・MYP(中等教育プログラム、11〜16歳)

・DP(ディプロマプログラム、16〜19歳)

・CP(キャリア関連プログラム、16〜19歳)

IBのカリキュラムの特徴は、教科を超えた「概念」を学ぶ点です。例えば「変化」という概念を、歴史、科学、芸術など様々な教科を通して学びます。また、自分で課題を見つけて調査する「探究学習」も重視されています[10]

アメリカンスクールでは、アメリカの教育制度に基づき、小学校(Elementary School)、中学校(Middle School)、高校(High School)の区分で学びます。高校ではAP(Advanced Placement)という大学レベルの科目を学ぶこともできます。

フランス系やドイツ系の学校では、それぞれの国の教育制度に沿ったカリキュラムが提供されています。

シンガポールの教育専門家は「インターナショナルスクールの多様性はその強みです。子どもの学び方や興味に合わせて、最適な教育プログラムを選ぶことができます」と述べています[11]

教科書と教材の違い

ケンブリッジ認定校では、ケンブリッジ大学出版局(Cambridge University Press)が発行する専用の教科書や教材を使用することが多いです。これらの教材は世界中のケンブリッジ認定校で使われており、一貫した内容と水準を保っています。

教科書は詳しい説明と練習問題が豊富で、自学自習にも適しています。また、過去の試験問題集も充実しており、IGCSE試験やAレベル試験の対策に役立ちます[12]

一方、インターナショナルスクールの教材は学校によって様々です。国際バカロレア認定校では、特定の教科書だけでなく、様々な資料や本、インターネット、実験などを通して学ぶことが多いです。

アメリカンスクールでは、アメリカで使われている教科書やオンライン教材を使うことが多く、活動的な学習を促す教材が多いのが特徴です。

イギリスの教育研究者は「ケンブリッジの教材は体系的で分かりやすいのが強みです。一方、IBなどのプログラムでは、様々な資料を使って多角的に学ぶことで、情報を比較・分析する力が育まれます」と分析しています[13]

卒業後の進路と将来への影響

最後に、それぞれの学校を卒業した後の進路や、長期的な影響について考えてみましょう。

大学進学に関する違いと特徴

ケンブリッジ認定校とインターナショナルスクール、どちらも卒業生は世界中の大学への進学が可能です。しかし、それぞれ強みとなる地域や大学の種類が異なります。

ケンブリッジ認定校の卒業生は、Aレベルの資格を持っているため、特にイギリス、オーストラリア、カナダなどのイギリス連邦諸国の大学への進学に有利です。オックスフォード大学やケンブリッジ大学などのイギリスの名門大学も、Aレベルの成績を重視した入学者選抜を行っています[14]

また、科目を絞って深く学ぶAレベルのシステムは、早い段階から専門分野を決めて学ぶイギリスの大学教育と相性が良いです。

一方、国際バカロレア認定校の卒業生は、IBディプロマを取得することで、世界中のほぼすべての大学で評価されます。特に、アメリカ、カナダ、ヨーロッパ、オーストラリアなど多くの国の大学がIBディプロマを高く評価しています。

アメリカンスクール卒業生は、アメリカの大学への進学に有利です。AP(Advanced Placement)の科目を履修していると、アメリカの大学で単位として認められることもあります。

アメリカの教育コンサルタントは「ケンブリッジとIBは異なるアプローチですが、どちらも世界的に認められた優れた教育システムです。ケンブリッジは特に科学や医学分野に強く、IBは文系や国際関係などの分野で評価が高い傾向があります」と指摘しています[15]

国際的な資格と認定の違い

ケンブリッジ認定校の主要な資格はIGCSEとAレベルです。これらはイギリスの教育制度の中心となる資格で、特にイギリス連邦諸国を中心に広く認められています。

IGCSEは中等教育の修了を示す資格で、16歳頃に取得します。Aレベルは大学入学のための資格で、18歳頃に取得します。科目ごとにA*、A、B、C、D、Eなどの評価がつきます。

一方、国際バカロレア認定校の最も重要な資格はIBディプロマです。これは6つの科目グループ(言語と文学、言語習得、個人と社会、科学、数学、芸術)から1科目ずつ選んで学び、さらに「知の理論」「課題論文」「創造性・活動・奉仕」という3つのコア要素も修了する必要があります。各科目は7点満点で評価され、コア要素と合わせて最大45点となります[16]

アメリカンスクールでは、高校卒業資格(High School Diploma)が基本となり、さらにAP(Advanced Placement)試験で高得点を取ることが大学進学には重要です。

ドイツの教育専門家は「どの資格も長所があります。ケンブリッジのAレベルは特定分野を深く学びたい生徒に、IBディプロマは幅広い知識とスキルを身につけたい生徒に向いています」と説明しています[17]

将来のキャリアと国際的な視野への影響

どちらの教育を受けるかによって、子どもの将来のキャリアや考え方にも違いが出てくる可能性があります。

ケンブリッジ認定校の卒業生は、専門的な知識が深いため、特定の分野で専門家になる道に進みやすい傾向があります。例えば、医学、法律、工学、自然科学などの分野で活躍する人が多いです。

イギリスの教育システムは伝統的に「専門家」を育てることを重視してきたため、早い段階から自分の得意分野を見つけて伸ばしていくことができます。

一方、国際バカロレアなどのプログラムを持つインターナショナルスクールの卒業生は、幅広い知識と国際的な視野を持っているため、国際機関、多国籍企業、NPO/NGOなど、国境を越えて活動する場で力を発揮することが多いようです。

フランスの教育研究者は「IBの卒業生は批判的思考力とコミュニケーション能力に優れているため、外交官、国際ジャーナリスト、グローバル企業の経営者などの道に進むことが多いです」と分析しています[18]

実際、私の周りでも、ケンブリッジ系の学校出身の友人は医師や研究者になった人が多く、IB校出身の知人は国際的なビジネスや芸術の分野で活躍している人が目立ちます。

ただし、これはあくまで傾向であり、個人の適性や努力によって将来は大きく変わります。どちらの教育システムでも、グローバルな視野と高い学力を身につけることができ、世界中で活躍する可能性が広がります。

結び:子どもと家族に合った選択を

ケンブリッジ認定校と一般的なインターナショナルスクールの違いを見てきましたが、どちらが「良い」ということではなく、子どもの性格や学び方、家族の価値観や将来の目標に合った選択をすることが大切です。

子どもが体系的に学ぶことを好み、特定の分野で深く学びたいと思っている場合は、ケンブリッジ認定校が合っているかもしれません。一方、様々なことに興味を持ち、幅広く学びたい子どもには、国際バカロレアなどのプログラムを提供するインターナショナルスクールが適しているかもしれません。

また、家族の状況も考慮する必要があります。海外への転勤が多い家庭では、世界中に学校がある国際バカロレアプログラムが便利かもしれません。一方、イギリスやオーストラリアなどへの留学を考えている場合は、ケンブリッジのシステムに慣れておくと良いでしょう。

最も大切なのは、学校を訪問して実際の雰囲気を感じることです。教育内容だけでなく、学校の雰囲気、教師の姿勢、子どもたちの様子なども重要な判断材料になります。

どちらの選択をしても、英語で学ぶ環境は子どもに大きな可能性をもたらします。英語を話すことは特別なことではなく、適切な環境があれば誰でも身につけられるスキルです。日本語という複雑な言語をマスターしている子どもたちには、英語を習得する十分な力があります。

私自身の経験からも、子どもたちは想像以上に適応力があり、新しい環境や言語にも柔軟に対応できることを実感しています。大切なのは、子どもが自分のペースで学び、成長できる環境を選ぶことです。

参考文献

[1] Cambridge Assessment International Education. (2023). “Our global community”. https://www.cambridgeinternational.org/about-us/our-global-community/

[2] Cambridge Assessment International Education. (2023). “Become a Cambridge school”. https://www.cambridgeinternational.org/become-a-cambridge-school/

[3] International Schools Database. (2024). “Types of International Schools”. https://www.international-schools-database.com/articles/types-of-international-schools

[4] International Baccalaureate Organization. (2023). “What is the IB?”. https://www.ibo.org/about-the-ib/what-is-the-ib/

[5] British Council. (2023). “The British education system”. https://www.britishcouncil.org/education/schools/support-for-international-schools/education-system

[6] Australian International Education Association. (2023). “Comparing International Curricula”. https://www.internationaleducation.gov.au/research/international-student-data/pages/default.aspx

[7] Cambridge Assessment International Education. (2023). “Cambridge Pathway”. https://www.cambridgeinternational.org/programmes-and-qualifications/cambridge-pathway/

[8] Cambridge Assessment International Education. (2023). “Cambridge IGCSE”. https://www.cambridgeinternational.org/programmes-and-qualifications/cambridge-upper-secondary/cambridge-igcse/

[9] Canadian Education Research Council. (2023). “International Education Systems: A Comparative Study”. https://www.cerc.ca/publications/international-education-systems

[10] International Baccalaureate Organization. (2023). “IB programmes”. https://www.ibo.org/programmes/

[11] Singapore International School Council. (2023). “Choosing the Right International School”. https://www.singaporeedu.gov.sg/international-schools

[12] Cambridge University Press. (2023). “Cambridge International Education”. https://www.cambridge.org/us/education/cambridge-international

[13] UK Educational Research Foundation. (2023). “Learning Materials in International Schools”. https://www.ukerf.org.uk/research/international-education

[14] Universities and Colleges Admissions Service. (2023). “International qualifications”. https://www.ucas.com/international/international-qualifications

[15] American International Education Consultants. (2023). “University Admissions: IGCSE, IB and AP Compared”. https://www.aiec.edu/research/university-admissions-international-qualifications

[16] International Baccalaureate Organization. (2023). “The Diploma Programme curriculum”. https://www.ibo.org/programmes/diploma-programme/curriculum/

[17] Deutsche Gesellschaft für Internationale Bildung. (2023). “Internationale Bildungsabschlüsse im Vergleich”. https://www.dgib.de/forschung/internationale-bildungsabschluesse

[18] Institut Français de l’Éducation Internationale. (2023). “Parcours professionnels des diplômés internationaux”. https://www.ifei.fr/etudes/parcours-professionnels

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