自己文化の客観視:文化間理解における自己認識の重要性と育成法

グローバルシチズンシッププログラム

自己文化を客観的に見つめることは、異文化理解の第一歩です。私たちは自分の文化を「当たり前」と思いがちですが、その「当たり前」は人によって異なります。私の息子が通うインターナショナルスクールでは、多様な文化背景を持つ子どもたちが日々交流する中で、自分の持つ「当たり前」が必ずしも世界共通ではないことを自然に学んでいます。

文化間理解を深めるためには、まず自己の文化的背景を認識し、それを客観的に評価できる力が必要です。この記事では、文化的自己認識の重要性と、それを育むための具体的な方法について、海外の研究や教育実践を踏まえながら解説します。

文化的自己認識の重要性

文化的自己認識とは何か

文化的自己認識とは、自分自身の価値観や行動パターン、考え方が、自分の育った文化環境によって形作られていることを理解し、認識する能力のことです。ベネット(Bennett)という研究者は、文化的自己認識を「異文化学習の前提条件」と位置づけています[1]。私たちは自分の文化的フィルターを通して世界を見ているため、そのフィルターの存在に気づかない限り、他の文化を正しく理解することはできません。

カントリーナビゲーターというウェブサイトによれば、「自己の文化的背景を振り返ることで、他者の文化についてより理解を深め、偏見を避けることができる」と述べられています[2]。この自己認識なしには、自分の文化を「普通」「正しい」とし、他の文化を「奇妙」「間違っている」と判断してしまう恐れがあります。

グローバル社会における自己文化理解の意義

現代のグローバル社会では、国境を越えた交流が日常的になっています。私自身、2001年から2005年までカナダのバンクーバーで暮らした経験がありますが、その間に自分の「日本人らしさ」を強く自覚したことが思い出されます。異なる文化との接触は、自分自身の文化的アイデンティティを浮き彫りにする効果があるのです。

「スキルズユーニード」というサイトでは、「異文化間の認識は、同僚同士や上司・部下間の交流をスムーズにし、誤解を防ぐ助けになる」と説明されています[3]。グローバルな環境で仕事をする上で、自文化を客観視する能力は、ただの教養ではなく実務的なスキルとなっているのです。

文化的バイアスの認識

私たちは誰もが無意識の文化的偏見(バイアス)を持っています。これは悪いことではなく、人間が社会化される過程で自然に身につくものです。重要なのは、そうした偏見の存在に気づき、それを乗り越える努力をすることです。

息子のインターナショナルスクールでは、文化的バイアスについての授業が行われています。先日、息子が「日本では『沈黙は金』と言うけれど、アメリカでは『沈黙は不快』と感じる人もいるんだよ」と教えてくれました。こうした文化的な違いを学ぶことで、コミュニケーションの誤解を減らすことができます。

「オハイオ州立大学のカーワン人種研究所によれば、『無意識の偏見』とは、私たちの理解、行動、決断に無意識のうちに影響を与える態度やステレオタイプのこと」とされています[4]。こうした無意識の偏見に気づくことが、異文化理解の第一歩となります。

自己文化の客観視方法

比較文化アプローチ

自分の文化を客観的に見るためには、他の文化と比較することが効果的です。この比較文化アプローチは、文化的特徴を相対化して理解する手助けになります。

たとえば、ホフステード(Hofstede)の文化的次元理論では、権力格差、個人主義 vs 集団主義、不確実性の回避、男性らしさ vs 女性らしさなどの次元で文化を比較します[5]。息子のクラスメイトには、アメリカ、イギリス、オーストラリア、韓国、中国など様々な国からの子どもたちがいますが、グループ活動の際の役割分担や意思決定の方法に文化的な違いが表れることがあります。

アメリカ人の子どもは自分の意見を積極的に主張し、リーダーシップを取ろうとする傾向があるのに対し、日本や韓国の子どもたちは全体の調和を重視する傾向があります。こうした違いに気づくことで、自分の行動パターンが文化的に形成されていることを認識できるようになります。

批判的自己内省の実践

自分の価値観や行動を批判的に振り返る習慣をつけることも大切です。「なぜ私はこう考えるのか」「なぜこの行動が自然だと感じるのか」と自問することで、自分の文化的背景の影響に気づくことができます。

ミッチェルとパラス(Mitchell and Paras)の研究によれば、「カナダとインドの大学生の異文化間の出会いは、カナダの学生が文化的視点を変え、自分の価値観、信念、自己概念に疑問を投げかける原因となった」とされています[6]。このような批判的な自己内省は、自分の文化的前提を再評価するきっかけとなります。

私自身、カナダでの生活を通じて、日本では当たり前だと思っていた「察する文化」が必ずしも普遍的ではないことに気づきました。明確な言語表現を好む北米の文化と接することで、自分のコミュニケーションスタイルを見直す機会になりました。

文化的アイデンティティの探求

自分のルーツや家族の歴史を掘り下げることも、文化的自己認識を深める方法です。私の場合、祖父母の戦争体験や両親の教育方針が、私の価値観形成にどう影響したかを考えることで、自分の文化的アイデンティティをより深く理解できるようになりました。

パーティシペートラーニングというサイトでは、「自己認識を持った生徒は、自分の視点、選択、態度を振り返り、個人的な経験が時間の経過とともに彼らをどのように形作ってきたかを認識する」と説明されています[7]。この自己認識の過程で、生徒たちは自分の視点が多くの視点の一つに過ぎないことを理解し始めます。

息子のインターナショナルスクールでは、「ファミリーヒストリープロジェクト」という取り組みがあり、子どもたちが自分の家族の歴史や文化的背景を調べて発表します。息子は自分のルーツを辿る中で、日本とアメリカの文化が混ざり合った独自のアイデンティティを形成していることを自覚するようになりました。

教育現場での文化的自己認識の育成

インターナショナルスクールでの実践例

インターナショナルスクールは、様々な文化的背景を持つ生徒と教師が集まる環境であり、文化的自己認識を育む絶好の場となっています。息子の通うインターナショナルスクールでは、国際バカロレア(IB)のプログラムの一環として、異文化理解と文化的自己認識を重視した教育が行われています。

「インターナショナルマインドネスは国際バカロレア(IB)教育の使命の中心であり、自己の偏見を取り除き、他者に対するより大きな感覚を受け入れることを可能にする心の枠組みとして定義される」と研究者は説明しています[8]。この「インターナショナルマインドネス」の育成には、多言語主義、異文化理解、グローバルな関与という三つの要素が含まれています。

具体的な実践としては、「文化交流デー」というイベントがあります。各国の文化を紹介するブースが設けられ、食べ物、衣装、音楽などを通じて互いの文化を学び合います。この活動を通じて、子どもたちは自分の文化を客観的に説明する機会を得るとともに、他の文化に対する理解を深めています。

文化間対話の促進方法

教育現場での文化間対話を促進するためには、安全で尊重された環境づくりが欠かせません。意見の対立があっても、それを建設的な学びの機会として活かすことが重要です。

「ゴーアブロード」というサイトによれば、「異文化間コミュニケーションに必要な資質には、文化的自己認識、共感、積極的な傾聴、問題解決能力などがある」とされています[9]。これらの資質を育むためには、日常的な対話の機会が必要です。

息子のクラスでは、「サークルタイム」という活動があります。円になって座り、特定のテーマについて一人ずつ意見を述べていく活動です。「あなたの国の食事マナーは?」「あなたの家庭での休日の過ごし方は?」といった問いかけを通じて、文化的な違いと共通点を発見していきます。子どもたちはこの活動を通じて、自分の文化的背景を言語化する練習になるとともに、多様な価値観に触れる機会となっています。

教師の文化的感応力の向上

文化的自己認識を育むためには、教師自身が文化的感応力を持っていることが重要です。教師は自分の文化的バイアスに気づき、それを乗り越える努力をすることで、生徒の模範となることができます。

「文化的感応力のある教育は、生徒の文化的背景を考慮し、その背景に合わせた学習方法を用いることで、より良い教育成果につながる」とアメリカの全国教育協会(NEA)は述べています[10]。これは単に多様性を認めるだけでなく、それを学習の基盤として活用する姿勢です。

息子の学校では、教師向けの異文化理解ワークショップが定期的に開催されています。先日の保護者会で、担任の先生が「日本の教育システムと欧米の教育システムの違いを理解することで、日本人生徒の学習スタイルをより良くサポートできるようになった」と話していました。このように、教師自身が文化的自己認識を深めることで、多様な文化背景を持つ生徒たちを効果的に指導することができるのです。

家庭での文化的自己認識の育み方

家族の文化的物語の共有

家庭での文化的自己認識を育むためには、家族の歴史や文化的な物語を共有することが有効です。私の家庭では、祖父母の戦争体験や私自身のカナダ生活の話を息子に伝えることで、日本の文化と歴史への理解を深める機会を作っています。

研究によれば、「家族の物語を知ることは、子どもの回復力とアイデンティティ形成に重要な役割を果たす」とされています[11]。自分がどこから来たのか、どのような文化的背景を持っているのかを理解することで、子どもは自分自身をより深く理解することができるようになります。

息子は日本とアメリカの文化が混じった環境で育っていますが、日本の祖父母との交流を通じて日本文化への理解を深めています。お正月やお盆には日本の伝統的な行事に参加し、それらの意味について話し合うことで、日本文化への親しみと理解を育んでいます。

多様な文化体験の提供

子どもに多様な文化体験を提供することも、文化的自己認識を育む上で重要です。異なる文化の食べ物、音楽、芸術、言語に触れることで、自分の文化との違いや共通点に気づくきっかけを作ることができます。

「エボルブコミュニティーズ」というサイトによれば、「文化的認識を高めることで、文化的障壁を取り除き、異なる人々を尊重し、評価することを学ぶことによって架け橋を築くことができる」とされています[12]。この架け橋づくりは、様々な文化体験を通じて自然に行われます。

我が家では、国際的な友人家族との交流を大切にしています。アメリカ人、カナダ人、オーストラリア人、中国人など様々な国の友人とのバーベキューやホームパーティーを通じて、息子は自然に多様な文化に触れています。先日は韓国人家族を招いて食事会を開き、キムチの作り方を教えてもらいました。こうした体験は、自分の食文化を相対化して見る機会になっています。

対話を通じた文化的気づきの促進

家庭での対話を通じて、文化的な気づきを促進することも大切です。日常生活の中で生じる文化的な違いや疑問について話し合うことで、子どもは自分の文化的視点を意識するようになります。

「異文化理解教育の目標は、文化的に多様な環境が持つダイナミックな性質、つまり『同一性と他者性の不安定な混合』を強調することにある」と研究者は述べています[13]。この複雑な理解は、日々の対話の中で少しずつ育まれていきます。

息子が学校から帰ってきたとき、「今日、アメリカ人の友達が『いただきます』と言わずに食べ始めたけど、それは失礼なことなの?」と質問してきたことがあります。このような疑問を大切にし、異なる文化の食事マナーについて話し合うことで、文化的な違いへの理解を深めることができました。

職場での異文化間理解と自己認識

多文化チームでの効果的なコミュニケーション

グローバル化が進む現代のビジネス環境では、多文化チームでの効果的なコミュニケーションが求められています。そのためには、自分のコミュニケーションスタイルが文化的に形成されていることを認識し、状況に応じて柔軟に対応する能力が必要です。

「カルチャーアリー」というサイトでは、「文化的認識は基盤を築くのに対し、文化的能力はさらに一歩進んで、様々な文化的背景を持つ人々と効果的かつ敬意を持って関わるために必要なスキルと行動を身につけること」だと説明しています[14]。この能力は、多文化チームで仕事をする上で非常に重要です。

私の職場には様々な国籍の同僚がいます。特に印象的だったのは、会議での意思決定の方法の違いです。欧米の同僚は明確な結論を求める傾向があるのに対し、日本人は「持ち帰って検討する」という曖昧な終わり方を好みます。このような違いを理解し、互いに歩み寄ることで、より効果的なコミュニケーションが可能になります。

異文化研修の重要性

職場での文化的自己認識を高めるためには、系統的な異文化研修が効果的です。単なる文化的知識の提供だけでなく、自分の文化的バイアスに気づき、それを乗り越える方法を学ぶことが重要です。

「ジャパンインターカルチュラルコンサルティング」によれば、「異文化研修は、一般的な文化的認識と理解を高めるとともに、文化的な違いが生じた際の実践的なビジネス戦略を開発するためのもの」とされています[15]。名刺交換や箸の使い方といった基本的なトピックを超えて、ビジネスの成果に影響を与える実質的な洞察を提供することが重要です。

私の会社では、新しい外国人社員が入社する際に、日本の仕事文化についての研修が行われます。同時に、日本人社員に対しても異文化理解のためのワークショップが開催されています。このような双方向の学びが、文化的な誤解を減らし、より効果的な協働につながっています。

文化的仲介者としての役割

異文化経験を持つ人は、異なる文化間の「仲介者」としての役割を果たすことができます。私自身、カナダでの滞在経験を活かして、日本人同僚と外国人クライアントとのコミュニケーションをサポートする役割を担うことがあります。

研究によれば、「二文化的な人々は、異文化間の架け橋となり、異なる文化的視点を統合する能力を持っている」とされています[16]。この能力は、グローバルなビジネス環境において大きな価値を持ちます。

先日、アメリカ人クライアントとの会議で、日本側の「検討します」という回答が「実現の可能性が低い」という意味だと誤解されそうになったことがありました。私はその場で、日本の文化では直接的に「ノー」と言わないことが多いと説明し、実際には真剣に検討していることを伝えました。このような文化的な通訳の役割が、ビジネス関係の円滑化に役立っています。

文化的自己認識の広がりと深まり

グローバルシチズンシップとしての文化的自己認識

文化的自己認識は、単なる異文化理解のスキルを超えて、グローバルシチズンシップの基盤となる資質です。自分の文化的視点を相対化できる人は、グローバルな課題に対してより包括的な理解と共感を持つことができます。

「ジャパンソシオロジー」というサイトによれば、「『国際理解のための教育』は、各国の理解、人権教育、平和教育、国連の理解などの概念を含む」とされています[17]。この教育の目的は、単に他国やその文化を理解するだけでなく、人々の国際的な視野を広げ、地球市民としての一体感、世界の相互依存性、平和・人権・環境に対する意識を育むことにあります。

息子のインターナショナルスクールでは、「グローバルシチズンシップ」の授業が行われています。先日のプロジェクトでは、世界の水問題について調べ、自分たちにできる行動を考えました。このような学びを通じて、文化や国境を超えた視点で世界の課題を考える姿勢が育まれています。

生涯学習としての文化的成長

文化的自己認識は一度身につければ終わりというものではなく、生涯を通じて深めていくべき資質です。新しい文化との出会いや自己内省を通じて、常に自分の文化的視点を見直し、成長させていくことが大切です。

「文化的能力は、異文化間コミュニケーションを通して培われるもので、一方的な説明や講義だけでは身につかない。実際の体験とその内省、そして異なる文化的背景を持つ人々との有意義な交流を通じて発展していく」と研究者は指摘しています[18]。

私自身、カナダから帰国して20年近くが経ちますが、今でも新しい異文化体験から学ぶことがあります。息子のインターナショナルスクールの保護者会では、様々な国の親たちと交流する機会があり、教育に対する多様な価値観に触れています。このような継続的な学びが、文化的自己認識をさらに深めることにつながっています。

教育改革への示唆

文化的自己認識の重要性は、日本の教育改革にも示唆を与えます。グローバル化が進む現代社会では、自己文化を客観視し、多様な文化と建設的に関わる能力を育むことが教育の重要な目標となるべきです。

「文化的認識は教育において基本的なものであり、すべての生徒に公平な学習環境を提供するために不可欠である」と教育専門家は述べています[19]。平等(すべての生徒に同じものを与える)と公平(生徒のニーズに応じてリソースを提供する)の違いを理解し、文化的多様性に対応した教育アプローチを採用することが重要です。

息子のインターナショナルスクールでの経験を見ていると、日本の公教育にも取り入れるべき実践が多くあります。例えば、グループディスカッションを通じて多様な意見を尊重する姿勢や、プロジェクトベースの学習を通じて批判的思考力を育む方法などは、文化的自己認識を育む上で効果的です。

また、英語教育についても考えさせられます。インターナショナルスクールでは、英語は単なる学習の対象ではなく、学びのための道具として機能しています。日本の英語教育も、文法や単語の暗記に偏るのではなく、実践的なコミュニケーションツールとして教えることで、言語学習への意欲を高めることができるでしょう。英語の難しさを強調するのではなく、むしろ日本語の方が複雑な言語であり、日本語を習得している時点で英語を話す素養は十分にあることを伝えるべきです。

文化間理解を深めるための具体的実践

物語と文学を通じた理解

異なる文化の物語や文学作品に触れることは、文化的自己認識を深める効果的な方法です。物語は、単なる事実や統計では伝えられない文化の機微や価値観を伝えることができます。

研究によれば、「文学は異文化理解の媒体として有効であり、自己理解の発達にも役立つ」とされています[20]。物語を通じて他者の視点から世界を見ることで、自分の文化的前提を再考する機会が生まれます。

息子のインターナショナルスクールでは、様々な国の民話や現代小説が読まれています。先日、日本の「かさじぞう」という民話が授業で取り上げられ、日本の「思いやり」や「お返し」の価値観について国際的な視点から議論されました。息子は、友達からの質問を通じて、日本文化の特徴を改めて意識する機会となったと話していました。

デジタルツールを活用した文化交流

現代のテクノロジーは、世界中の人々との交流を可能にし、文化的自己認識を深める新たな機会を提供しています。オンラインでの国際交流プロジェクトや、異文化理解のためのアプリケーションなど、デジタルツールを活用した実践が広がっています。

「テクノロジーを活用した異文化学習に関する研究によると、ビデオ会議、電子メール、ソーシャルメディアなどのテクノロジーが、異文化間の交流と学習を促進するために頻繁に使用されている」という調査結果があります[21]。

息子のクラスでは、オーストラリアの学校とオンライン交流プロジェクトを行っています。定期的なビデオ会議や共同研究を通じて、お互いの文化や学校生活について学び合っています。最近は環境問題について共同調査を行い、日本とオーストラリアでの環境への取り組みの違いを比較していました。この活動を通じて、自国の環境問題への取り組みを客観的に見つめ直す機会となっています。

体験学習とフィールドワーク

実際に異なる文化環境に身を置き、体験を通じて学ぶことも、文化的自己認識を深める上で非常に有効です。フィールドワークや短期留学、ホームステイなどの体験は、教室での学びを超えた深い気づきをもたらします。

「体験学習は、直接的な文化体験を通じて、自己認識と文化理解を深める効果的な方法である」と研究者は述べています[22]。特に短期留学は、参加者の異文化間能力を高める効果があるとされています。

息子のインターナショナルスクールでは、6年生になると京都での日本文化体験プログラムがあります。寺院や神社の訪問、和菓子作り、茶道体験などを通じて、日本文化を国際的な視点から再発見する機会となっています。外国人の友達と一緒に日本文化を体験することで、自分が当たり前と思っていた日本の習慣や価値観を、新たな視点で見つめ直すきっかけになっているようです。

まとめ:文化的自己認識の未来

生涯発達としての文化的自己認識

文化的自己認識は、一度身につけば終わりというものではなく、生涯を通じて発達し続ける資質です。新たな文化との出会いや経験を通じて、常に自分の文化的視点を更新し、より豊かな異文化理解へと発展させていくことが重要です。

研究によれば、「文化的自己認識は異文化コンピテンスの不可欠な構成要素であり、自己認識が高まるほど、他者の文化的視点を理解し尊重する能力も高まる」とされています[23]。この循環的な関係を意識し、継続的に自己認識を深める姿勢が大切です。

私自身、息子のインターナショナルスクールでの経験を通じて、自分の文化的視点を見直す機会が増えました。親としての関わりの中で、「日本的な子育て」と「欧米的な子育て」の違いに気づき、そのどちらも絶対的に正しいわけではなく、状況や子どもの個性に応じて柔軟に対応することの重要性を学んでいます。

社会変革のための文化的自己認識

文化的自己認識は、個人の成長だけでなく、社会変革のための基盤となる力でもあります。自分の文化的前提を意識し、多様な視点を受け入れることで、より包括的で公正な社会づくりに貢献することができます。

「ボーホールとウェイリンガー(Børhaug and Weyringer)の研究によれば、欧州のサマーキャンプ活動に参加した中学生は、他者の立場を間接的に体験し、社会的正義に関する批判的・共感的な省察と、より大きな意識を持つようになった」という報告があります[24]。このような経験は、社会変革への意識を育む上で重要です。

息子の学校では、「サービスラーニング」という取り組みがあり、地域社会や世界の課題に対して自分たちができることを考え、実践しています。最近は、近隣の老人ホームを訪問し、高齢者との交流を通じて世代間の理解を深める活動を行いました。このような体験を通じて、子どもたちは社会の多様性に対する感受性を高め、より包括的な視点を身につけています。

テクノロジーと文化的自己認識の未来

急速に発展するテクノロジーは、文化的自己認識の育成にも新たな可能性をもたらしています。バーチャルリアリティ(VR)や人工知能(AI)を活用した異文化体験シミュレーションなど、従来の方法では難しかった学習体験が可能になりつつあります。

研究によれば、「テクノロジーは異文化間の距離を縮め、より深い文化的交流と自己認識を促進する可能性を持っている」とされています[25]。一方で、テクノロジーに過度に依存することなく、実際の人間関係や体験を大切にすることも忘れてはなりません。

息子のクラスでは、最近、VRゴーグルを使って世界各地の文化体験をするプログラムが導入されました。エジプトのピラミッドやインドのタージマハルなど、実際に訪れることが難しい場所を仮想的に体験することで、世界の多様性への興味が高まっているようです。このようなテクノロジーは、文化的視野を広げる新たなツールとして活用されています。

文化的自己認識は、グローバル社会を生きる上で欠かせない資質です。自分の文化的レンズを意識し、多様な視点を受け入れる姿勢を育むことで、より豊かな異文化理解が可能になります。教育現場や家庭、職場での意識的な取り組みを通じて、互いの文化を尊重し合える社会の実現に貢献していきましょう。

引用文献

[1] Bennett, M. J. (2009). Defining, measuring, and facilitating intercultural learning: a conceptual introduction to the Intercultural Education double supplement. Intercultural Education, 20(sup1), S1-S13.

[2] Country Navigator. (2025, January 24). Intercultural awareness and sensitivity. https://www.countrynavigator.com/blog/intercultural-awareness-and-sensitivity

[3] SkillsYouNeed. (n.d.). Intercultural Awareness. https://www.skillsyouneed.com/ips/intercultural-awareness.html

[4] Mississippi College. (n.d.). Importance of Cultural Awareness for Educators. https://online.mc.edu/degrees/education/cultural-awareness-for-educators

[5] CultureAlly. (2024, July 12). What is Cultural Awareness? https://www.cultureally.com/blog/what-is-cultural-awareness

[6] Mitchell, A., & Paras, A. (2018). When difference creates dissonance: understanding the ‘engine’ of intercultural learning in study abroad. Intercultural Education, 29(3), 321-339.

[7] Participate Learning. (2025, February 11). Global Competency: How to Build Cultural Self-awareness. https://www.participatelearning.com/blog/global-competency-how-to-build-cultural-self-awareness/

[8] ResearchGate. (n.d.). International Mindedness is central to the mission of International Baccalaureate (IB) education. https://www.researchgate.net/publication/275450645_International_education_The_concept_and_its_relationship_to_intercultural_education

[9] GoAbroad. (2025, February 26). Why Is Intercultural Learning Important? https://www.goabroad.com/articles/study-abroad/why-is-intercultural-learning-important

[10] Mississippi College. (n.d.). Importance of Cultural Awareness for Educators. https://online.mc.edu/degrees/education/cultural-awareness-for-educators

[11] Evolve Communities. (2024, July 25). Why is Cultural Awareness Important? https://www.evolves.com.au/why-is-cultural-awareness-important/

[12] Evolve Communities. (2024, July 25). Why is Cultural Awareness Important? https://www.evolves.com.au/why-is-cultural-awareness-important/

[13] Hajisoteriou, C., & Angelides, P. (2017). Collaborative art-making for reducing marginalisation and promoting intercultural education and inclusion. International Journal of Inclusive Education, 21(4), 361-375.

[14] CultureAlly. (2024, July 12). What is Cultural Awareness? https://www.cultureally.com/blog/what-is-cultural-awareness

[15] Japan Intercultural Consulting. (2020, July 12). Japanese Business Culture Training. https://japanintercultural.com/impactful-services/japanese-cross-cultural-training/japanese-business-culture-training/

[16] Springer Link. (n.d.). Turning Bicultural Critical Incidents into Inclusive Bicultural Identities and Organizations in US Subsidiaries in Japan. https://link.springer.com/chapter/10.1007/978-3-030-35574-6_14

[17] JAPANsociology. (2012, January 7). “Education for International Understanding” in Japan. https://japansociology.com/2012/01/07/education-for-international-understanding-in-japan/

[18] Humphreys, G., & Baker, W. (2021). Developing intercultural awareness from short-term study abroad: insights from an interview study of Japanese students. Language and Intercultural Communication, 21(2), 269-283.

[19] Mississippi College. (n.d.). Importance of Cultural Awareness for Educators. https://online.mc.edu/degrees/education/cultural-awareness-for-educators

[20] Hoff, H. E. (2013). ‘Self’ and ‘Other’ in meaningful interaction: using fiction to develop intercultural competence in the English classroom. Scandinavian Journal of Educational Research, 58(1), 20-36.

[21] ScienceDirect. (n.d.). A review of research on intercultural learning supported by technology. https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S1747938X20300191

[22] ERIC. (n.d.). The Impact of Study Abroad on College Students’ Intercultural Competence and Personal Development. https://eric.ed.gov/?id=EJ1188735

[23] ResearchGate. (2020, December 23). In pursuit of intercultural competence: Exploring self-awareness of EFL pupils in a lower-secondary school in Norway. https://www.researchgate.net/publication/347897014_In_pursuit_of_intercultural_competence_Exploring_self-awareness_of_EFL_pupils_in_a_lower-secondary_school_in_Norway

[24] Børhaug, F. B., & Weyringer, S. (2019). Developing Critical and Empathic Capabilities through the Appreciation of Difference. Intercultural Education, 30(1), 1-15.

[25] ScienceDirect. (n.d.). A review of research on intercultural learning supported by technology. https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S1747938X20300191

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