ネットショップ開業 正しい利益率の計算方法。【 8年運営してわかった施策公開。年商・月商は意味なし】

本記事で得られる知識

ネットショップ開業をするに当たっての商品の利益率に対する考え方・決定方法・計算方法について解説します。

記事の前提

とにかくネットショップ運営に興味がある方全員に向けての記事です。

記事の信頼性

筆者はネットショップ運営に精通しています。詳しくはこちら「運営者の紹介

重要なのは年商でも売上でもなく残る利益

ネットで「ネットショップ 開業 利益」と検索してみると、ネットショップの年商や利益についての相場に関する記事がでてきます。

正直な話利益率を上げるのも売上をあげるのも、運営者が利益を管理できる術を持っているのかで決まります。

その中、特に年商による比較や相場については、全くもって意味がありません。とにかく重要なのは「いくら残すのか」という最終利益額だからです。

年商が100億で税引前利益率0.1%の企業と、年商が1億で税引前利益率が10%の企業は、結果は同じで年間の税引前利益額が1000万円に変わりありません。

単純計算をしてみても、年商1億の企業の業務量より、100億の企業の業務量のほうが100倍あるのに、結果が同じなら、労力も量も少ない年商1億で利益率10%の方がとてつもなく効率がいいことが分かると思います。

ネットショップだけに限りませんが、売上は損益の入り口なので確かに重要ではありますが、会社を経営する上で最も重要なのは、年商ではなく残る利益です。

一般的な利益率・粗利益率だけで管理すると赤字になりやすい

一般的な損益計算書というのは、財務会計と呼ばれる会計においての計算書類のことを指します。

財務会計で管理をしてしまうと、ネットショップでは営業利益率が、売上の成長と共にどんどん逓減する特徴があります。最悪、売上が大きくなればなるほど赤字に陥りやすくなります。

残る利益を管理するために、重要なのは「管理会計における商品ごとの利益額の管理」となります。

この大きな違いは何かというと、例えば財務会計ではパート従業員や社員の人件費というのは「固定費」扱いで計算することが多いですが、管理会計では「個あたり人件費」を算出して、原価に組み入れた上で、その上で価格を決定し、商品ごとに利益額を計算して、管理することになります。

財務会計・管理会計・税務会計はそれぞれ書き方・把握の仕方が違いますが、最低でも財務会計・税務会計は、税務署に退出するためには必須なため、社内管理に重きをおいた管理会計が度外視されやすいと言えます。

個あたり人件費・資材費を加味した管理会計上の利益率でチェックする

社員の給与は基本的に月額で固定ですし、パート・アルバイトの方の時給も結局は上限が決まっていたりして、固定費で計上するわけで、これは財務会計・税務会計上は当然の勘定項目です。

しかし、本来人件費というのは、何かの作業をしてもらうことになるので、時間給と作業時間は相関関係にあります。

例えば、出荷作業が業務化されルーティーン化されていると、1個あたりの作業時間の平均値を計算することができます。

そして、そこから1個あたりの人件費が計算でき、それを販売原価に入れ込んで、販売価格を決定することで、残る利益についてどこを改善すればいいか、あるべき利益額との差異がコントロールしやすくなるわけです。

資材費についても同じです。商品ごとに選ぶ資材がマニュアル化されていないと、作業者が自分が時間をかけて”考えながら”ダンボールやプチプチ資材を選び、梱包することになります。

マニュアル化することで、商品の作業に対して”考えずに”資材を選ぶことができ、作業者の感覚によって本来選ぶ必要のないよりコストのかかる資材を選ぶ必要もなければ、選ぶのに考える時間が短縮化されることで、人件費自体を短縮化することができます。

この個あたりの人件費と個あたり資材費を、商品の原価計算の時点で組み入れることが、残る利益を増やすための秘策になります。

個あたり人件費・資材費などを加味した販売価格の計算方法

残る利益を意識しながら販売価格を決定するためには、まず以下の項目をすべて加味して販売原価を算出します。以下は税込みで算出します。

販売原価 = 商品原価 + 仕入時の支払送料/個 + 出荷時の支払送料/個 + 個あたり人件費 + 個あたり資材費

「仕入時の支払送料」は、仕入元から送ってもらう際にこちら側で送料を負担している場合に、まとまった数を発注して個あたり送料を抑えた場合にも、あくまで個あたりでいくらかかったのかを算出します。

「出荷時の支払送料/個」というのはもっとも送料額が高い1個だけ注文を受けた商品を出荷する際に運送会社に支払う送料の金額です。このとき都道府県別の場合は、設定した送料体系によりますが、基本的には関東以外から出荷なら東京基準です。関東出荷なら基準は関西になります。一番安い送料というよりは2、3番目あたりの送料で算出します。

「個あたり人件費」は、1個の商品を出荷する際に梱包にかかった時間から算出した金額です。例えば福利厚生などすべて含めてパート・アルバイトの時給が1000円だった場合に、梱包に2分かかったとします。この場合は、1000円 / 60分 × 2分 ≒34円です。1個出荷するのに34円の人件費がかかっているとして原価に組み入れます。

注意してほしいのは、あくまで人をやとった場合に計算します。1人で運営しているなら、時給は関係ないからです。

「個あたり資材費」は予め決めていたダンボールだけでなく、プチプチ・OP袋や印刷する際の送り状代(有料の場合)などすべて含みます。

ここから算出した販売原価に対して、以下の基準で割戻し計算をして販売価格を算出します。

販売価格(税込) = (販売原価 / (100% – 想定利益率 – 消費税額 – 決済手数料 – 販売手数料) ) – 想定受取送料

です。

想定利益率はあくまで、「1個売れたときに何%の利益を確保したいか」です。尚、ここを0にして計算するとここが利益0になる「損益分岐点」を計算することができます。

消費税額は10%、決済手数料は自社ECやモール系ECでクレジットカードでの決済手数料を基準に設定します。相場は3.5%〜5.5%なので、筆者よく5%で計算しています。

販売手数料については、自社EC系では無料の場合が多く、モール系ECでよく発生します。なので、販売の媒体によって大きく前後します。

ここまで算出したらあとは、固定費分を回収するための最低数量を把握することができます。複数の取り扱いアイテムがある場合も、一旦は固定費全額を回収するための最低数量を算出します。

月に最低販売する必要のある個数 = 月額固定費(税込) / 販売価格(税込)

ここまでの一連の計算を商品ごとに行うことによって、次に解説する内容の施策をするための基準を設定することができます。

利益を残すためにはどうすればいいのか

商品に関する売上対策

ジャンルに左右はされますが、販売したい商品の市場売価というものを、検索などで調べて算出することから始めます。

そして導き出された市場価格に対して、上記で説明した販売価格と比べてギャップがある場合に調整をする必要があります。

市場価格の方が大きければ、想定利益率を上げて売上額も利益額もあげる判断ができますし、市場売価の方が低い場合には、クロスセットと呼ばれるセット品を組んだり、ストーリーを入れ込んで「買ってみたい」と思わせる施策をしたり、ギフト商品として市場売価自体を相対的に上げる施策をする必要があります。

商品以外に関する売上対策

商品以外で売上対策をする典型的な方法として送料の設定があります。

はじめから送料無料に設定すると1個注文が圧倒的に多くなります。かといって、完全に都道府県別に送料を頂頂戴すると複数アイテム購入時や、間違った送料を設定すると赤字に陥りやすくなります。

したがって、都道府県別の送料設定して、その都道府県別の送料を2番めに安い位置で設定をした上で、一定額以上の購入に対して送料無料という設定にすると、1個で買うと割高感があるけど、何個もあって送料無料にするとお得感が生まれやすく、まとめ買いが起こりやすくなります。

利益率を上げる対策

利益率を上げる施策は単純に「バックヤード業務の効率化」にあります。

バックヤード業務は多くはパート・アルバイトを雇っての作業になりますが、これについても予め各バックヤード業務のマニュアルを作り、それぞれ1件あたりの平均所要時間を想定しておいて、それに合わせて雇うべきです。

また、監視だと言われたらそれまでですが、平均値を設定しておいて、それに合わせて実際の時間が多ければ指導するか、平均値自体がおかしいということで、算出方法を変えるなど、地道な計測と算出が必要です。

特に冒頭から解説している、いつのタイミングで注文が入るかはわからない注文、いきなり入った場合に、いかに迅速に運送会社にわたす状態にするかという点にかかっています。

作業時間が短縮できれば利益率があがります。資材を選ぶ時間が短縮できても同様です。また、自社倉庫が広い場合には、商品の配置を工夫したり、朝に一括で送り状と納品書を印刷して、その後に照らし合わせするよりも、はじめから商品だけトータルピッキングをして、商品のバーコードに反応して納品書・送り状を印刷するシステムを作るなども、残る利益率を上げる施策となります。

カスタマー対応についても、電話がかかってきてから、問い合わせの種別ごとにすぐ注文を特定し、そして迅速に対応できるマニュアルができているかも、人件費削減の秘策になります。

現在では、在庫の一元管理や、受注の一元管理などのツールも月に1万円程度で提供しているサービスもたたあります。あくまで売上の規模に応じて、システムを導入してバックヤード業務をいかに高速化するかが鍵になります。

残る利益をいかに増やしていくかに焦点を

いかがだっでしょうか。あくまで基礎的な内容として、大局的な解説になってしまいましたが、あくまで残る利益を増やしていく努力をしていくようにしましょう。