マケプレプライム利用資格解説2023【2021年7月改定・新要件配送時間指標解説】

本記事で得られる知識

アマゾンにセラーとして出品する方向けに、マケプレプライムの利用資格について解説、アマゾンの最新の思惑と関係者から聞いた今回の方針に至った経緯と、今後の動きの予測について分析してみました。

記事の前提

アマゾンにてマケプレプライム対象のセラー、もしくは検討しているセラー向けです。

既にマケプレプライムがどういうものかを理解していることを前提に解説します。

記事の信頼性

筆者はネットショップ運営に精通しています。詳しくはこちら「運営者の紹介

マケプレプライムの要件について

配送品質指標、追跡可能率、キャンセル率の3つに加え、

2021年7月15日以降は、配送時間指標の計4つについて、

それぞれより厳しい指標を維持し続けることで、

マケプレプライムとして商品を販売することができます。

2021年7月15日以降は、えげつないほど厳格化される

7月15日以降、お急ぎ便の維持条件、

特にマケプレプライムの維持条件については

大幅に厳格化されることが決まっています。

土日休業の優遇の撤廃

2021年7月15日以前では、金曜日、土曜日、そして祝日の前日の注文はマケプレプライムであっても、

自動的に翌平日出荷で表示されており、土日祝日営業(平日休み)のセラーにとっては大きく不利で、

土日休みのセラーにとってはある種の優遇処置となっていました。

 

しかし、2021年7月15日以降については、マケプレに設定した商品は、

祝日以外は原則、13時まではの注文は当日出荷、

13時以降は翌日出荷となり、

単純に、土日休業の優遇が撤廃され、

マケプレを維持した上での例外処置は、

祝日以外は全くなくなる形になります。

都道府県別設定の廃止。お届け日数の一律固定化(厳格化)

マケプレ対象地域の設定をセラーが都道府県別に選択できなくなり、

日本全国のどこから商品を出荷するにしても、

マケプレプライムでの注文での出荷は、

本州、四国、九州への配送は、出荷期限日(デフォルトでは13時までは当日出荷、13時以降は翌日出荷)の翌日にお届け、

沖縄、北海道、離島は出荷期限日の2日後のお届けが必須となります。

 

2021年5月5日段階では、全国一律の納期設定が固定化され、

このお届け予定日に関するマケプレ利用資格の1つである、

「期日内配送率」は直近7日間平均で96%以上を維持する必要があります。

配送時間指標の新設

 

計算式(以下は分子も分母も直近7日間の閲覧数合計です) 商品(標準サイズ) 商品(大型サイズ)

「当日お届け」「翌日お届け」表示でのカートを獲った時の商品詳細ページ総閲覧数


カートを獲った時の商品詳細ページ総閲覧数

70% 以上 35% 以上

「当日お届け」「翌日お届け」「翌々日お届け」表示でのカートを獲った時の商品詳細ページ総閲覧数


カートを獲った時の商品詳細ページの総閲覧数

85% 以上 70% 以上

非常に複雑なイメージとなる新たな指標が「配送時間指標」です。

これが、マケプレプライム維持のために、7月から摘要になる新指標となります。

 

配送時間指標は、カートを獲ってる時の、ユーザーの商品詳細ページ閲覧数を計測するもので、

まず商品情報のパッケージサイズに基づいて「標準サイズ」と「大型サイズ」に自動的に分けて考えます。

つまり、ASINごとに標準サイズと大型サイズとに分けられます。

 

カートを獲った状態でプライム設定をしている商品の1日の商品詳細ページの総閲覧数のうち、

 

1日以内配送表示である「当日配送か翌日配送」という表記をして販売している状態を、

標準サイズであれば70%以上を維持し、

大型サイズであれば、35%以上、直近7日平均で維持する必要があり、

 

更に、2日以内配送表示である「当日配送」「翌日配送」「翌々日配送」という表記をして販売している状態を、

標準サイズであれば85%以上、大型サイズは75%以上、

直近7日平均で維持刷る必要があります。

 

上記のグラフの割合を、直近7日間の平均値で1つでも満たされないと、

プライムが剥奪になります。

新要件・改定された利用資格の重要なポイントと問題点

上記の新要件「配送時間指標」に加え、

期日前配送率自体も厳格化されており、

更に土日出荷が実質的に課されている点で、

えげつないほど厳格化しているとかなりセラーの中では話題になっています。

佐川急便、日本郵便での出荷ではマケプレプライム対応不可

代表的な大和運輸、佐川急便、日本郵便のお届け予定日を比較してみると、

大和運輸の翌日配送可能エリアが最も範囲が広いです。

 

マケプレプライムで固定で指定されるお届け予定日は、

日本全国のどこから発送しようと沖縄・北海道・離島は発送から2日後にはお届けする必要があり、

本州・四国・九州は必ず翌日に届ける必要があるので、

期日内配送率96%を維持するためには、

現実的に大和運輸のみが対応できる運送会社になります。

 

大和運輸以外で契約しているセラーの場合、

大和運輸と契約をして発送する体制を構築する必要があります。

土日の運送会社の集荷時間は平日と異なる可能性がある

もともと土日を休みとしていた運送会社の場合、

急遽土日の集荷をお願いすることになります。

 

大和運輸でないとマケプレに対応できないと書きましたが、

大和運輸の場合でも規模の大きい集荷エリアにどれだけ近いか、

 

場合によっては配送時間指標と期日内配送率の維持を実現するために、

出荷する際の物量によって、大和運輸側指定の締めの時間が通常より早かったり、

規定の営業所に持ち込みする必要もでてくるので、

通常とは違う業務オペレーションになる場合も考えられます。

 

こうなると、アマゾンの土日出荷だけなく、自社ECや楽天、ヤフーなどでの注文も土日出荷に対応させることで、

物量を維持して個あたり人件費を出荷効率を上げて最適化した上で、集荷してもらうなどの工夫が必要です。

広範囲に渡ってそもそも期日前配送率を満たせない

上記と内容がかぶりますが、

例えば、関西の一番西側の兵庫県から大和運輸で出荷しても、

北東北3県(青森県、岩手県、秋田県)は確実に2日になり、

沖縄・北海道・離島もエリアによっては3日以上になります。

 

南関東の最北である埼玉県あたりからの出荷となると、九州エリアが確実に翌日お届けが不可能であり、

同じく沖縄・北海道・離島はエリアによって3日以上かかります。

 

アマゾンが定めるお届け予定日数は近畿・中部・南関東あたり発送でやっと満たせる形となっており、

期日内配送率96%が非常に厳しく、

北海道、東北、北関東、中国、四国、九州、沖縄、離島からの発送のエリアのセラーは、

マケプレを維持することが事実上不可能になります。

標準サイズの1日以内配送表示の配送時間比率70%以上を維持することが非常に難しい

配送時間指標のうち、お届け予定日1日以内の商品詳細ページの閲覧率である70%(通常サイズ)を維持することが非常に難しいです。

 

お届け予定日1日以内とは、商品詳細ページのお届け予定日が「当日配送」か「翌日配送」になっている状態であり、

この表記になっているのはデフォルト設定であれば

14時締め(表示上は13時まで)なので、0時から13時までのカート獲得時のユーザーの閲覧数になります。

 

分母はセラーの1日のカート獲得時の商品詳細ページでの合計閲覧数ですので、

0時~13時までのユーザーの閲覧率を高めるための施策をするか(分子を増やす施策)、

13時以降23:59までの閲覧数を抑える施策(分母を増やす施策)をする必要があります。

 

閲覧数はあくまで利用資格を維持しようとするセラーがカートを獲っている時に限られるというところも鍵で、

セラーセントラル内でカートを獲った上で商品詳細ページの閲覧数は時間別・商品別に把握できないので、

必ず直近7日の指標に対して、その日その日で調整する必要があります。

 

プライベートブランドならプライムの設定しなくても、

D2C戦略やSNSを活用したマーケティングで、

流入させればプライムを外したことでの影響はほとんどありませんが、

NB品といったあいのり出品しているものについては非常にリスクが高く、

例えば、13時以降23:59の時間帯で、

テレビなどのメディアに取り上げられた場合、

そこの2日以内表示の時間帯だけ急激に閲覧率が急増するため、

1日以内の閲覧率が分母が増えたことでアウトになります。

どのように対策するべきか

マケプレを維持するとなった場合

  • 土日出荷に対する対策
  • 配送時間指標に対する対策
  • 都道府県別のリードタイム改定による期日内配送率に対する対策

の3つを見ていく必要があります。

出荷エリアの改善

1ヶ所出荷体制の場合

自社配送の場合は、1ヶ所から発送する場合は、近畿・中部・南関東エリアで行う必要があります。

これ以外の地域から発送しても、期日内配送率96%を維持することは事実上不可能です。

西日本と東日本の2ヶ所体制にする

2ヶ所で配送できれば、期日内配送率を維持することが可能になります。

FBAする

後述しますが、今回の大きく厳格化された指標の、アマゾンの思惑はFBA化です。

FBAであれば土日に関係なく、マケプレプライムではなく、通常のプライムとして扱われるので、

配送時間指標も、期日内配送率も気にする必要がありません。

2021年6月から、軽量化プログラムを含むFBA料金体系が改定となるので、

こちらも良案としての対策になります。

大和出荷必須

前述したとおり、大和出荷のみをプライム対象とする必要があります。

佐川急便・日本郵便でしか発送できない商品については、

確実にマケプレを外すか、大型商品に対応しているのであればFBAをする必要があります。

毎日マケプレを外す時間を設ける必要がある

配送時間指標の計算式は、

(「当日お届け表示」「 翌日お届け表示」での商品詳細ページのユーザー閲覧数) / 24時間の商品詳細ページのユーザー閲覧数

を、通常サイズ商品では70%以上、大型サイズでは35%以上を維持し、

「当日お届け表示」「 翌日お届け表示」「翌々日お届け表示」での商品詳細ページのユーザー閲覧数 / 24時間の商品詳細ページのユーザー閲覧数

を、通常サイズ商品は85%以上、大型サイズでは75%以上を維持する必要があります。

これらの閲覧数は全て、利用資格のあるセラーがカートを獲っている時の閲覧数となります。

 

これ、、、、、

まず24時間の中で、閲覧数の分布を把握することができませんので、毎日直近7日間の指標を見た上で、

指標を下回っている場合には、1日の中で締め時間が14時(ページ上の締めは13時)以降23:59までの間で、

数時間程度または全時間のプライムを外す形で調整するか、

当日出荷の締め時間を15時以降に後ろ倒しする必要があります。

 

理由は、「当日お届け表示」「翌日お届け表示」(指標では1日以内と表記している)に該当するのが、0時から13時までなので、ここを維持するためには、それ以外の時間帯のプライムを外すと、分母の数が減ります。

「翌々日お届け表示」の時間帯の閲覧数が減ると、1日以内指標の分子は変わらず、分母をへらすことができるため、通常サイズ70%と大型サイズ35%を維持しやすくなります。

期日内配送率では確実に捨てないといけない都道府県が存在する

前述しましたが、兵庫県でも北関東3県は完全にお届けは遅延、

埼玉出荷でも九州エリアへのお届けは完全に遅延となるため、

ここの部分の注文比率の合計が4%を超えるようであれば、

マケプレは確実に外れるので、

お急ぎ便だけ対応するかFBAする以外に方法がなくなります。

実質的なセラーへの締付けを行うアマゾンの思惑と今後の動きの予測

これだけ厳格化されるとなると、この新利用資格を維持する限り、

プライム設定をするセラーが圧倒的に減ります。

 

地理的に北海道、東北、北関東、中国、四国、九州、沖縄、離島エリアはプライムを実質的に利用できなくなります。

1日以内配送表示を維持するには、1時間あたりプライムのon/offでの配送時間比率の変動率を定めて、プライムをオフにする時間帯を地道に調整することになり、非常に手間です。

セラーによっては、夜の時間帯のほうが閲覧数が多いとなると、夜の時間帯のon/off切り替えも必須となってくる、そうなるとそもそも業務時間外なので、設定を外す選択をするセラーが圧倒的に多くなるはずです。

プライム条件を維持しても、実際に守っていないセラーは少なくない?

マケプレの状態を維持することと、実際にユーザーエクスペリエンスとして、その配送時間を厳密守ることとは、一致しません。

上記も、捨て身の技で北東北か九州エリアについては、お客様には翌日配送と言っておきながら、翌日に配送できないことを知りながら、プライム表記で販売することになります。

知人の知人と、微妙に遠い位置でアマゾン従業員の方の話を耳にすると、意外とマケプレを高い維持率を保っているところは半分もないという話を聞きます。

結局、このような厳格化の裏には、質の低いセラーの存在があるからこそと言うこともできます。

FBAをゴリ押ししたいのではないか

アマゾンの米国では、中国国内の業者に対して、積極的に日本のアマゾン倉庫に商品を預け(FBA)、販売することセールスをかなり積極的に行っています。

ここ数年、中国ブランドの商品が急激に高評価でプライム出荷していて、他の楽天ヤフーと比べると異質なのはこのためです。

日本では中国産より日本産の方が売れそうですが、アメリカのアマゾンでは日本の国産ブランドの多くは、中国国内で製造していることを知っていますし、何より中国の経済の台頭と、日本からの技術の流出に対して日本政府が全く持もって対策を施さず、中国国内のメーカーの商品品質が格段と上がっています。

というより、外国で製造するということは、そもそもその技術やノウハウを、その工場に与えることになり、本質的にはアウトソーシングしている時点で、こうなるのは完全に予測できていて、アマゾンの米国内ではここを積極的に攻めて、FBAで商品を売れば中国にいながら質の高い商品を販売できるというメリットを全面に押し出してきました。

その影響もあり日本国内でも、アマゾンの自社倉庫をどんどん拡大していました。

しかし、ここ昨今のコロナの影響でFBAに制限をかけ、コロナ対策を世界標準の倍以上に施した後に、アマゾンの予測に反して中国国内からの納品が少なく、アマゾン倉庫内に空きが出ています。

自分でFBAの条件を制限して、そして今回は空きが大きいから、積極的にFBA化する、そしてコロナ需要で過去最高になった2020年の売上を、2021年も当然ながら、特別利益的な意味合いではなく単純に「昨対超えする」という施策を推し進めている結果として、今回の厳格化につながっています。

実際、これだけ厳しいプライム要件を、自社出荷するよりはFBA出荷するほうが、管理も楽でありそして何よりもカートも取りやすいということは、これだけ厳しい基準を理解してもらえると、すぐイメージができると思います。

「表示したお届け予定日を約束する」とする方針の矛盾

全国どこにいても、都道府県ごとのお届け予定日が固定されますが、

関西エリアからの出荷だと北東北3県(青森県、岩手県、秋田県)お届けの注文は、

「翌日配送」と表記されているにも関わらず、翌日に届かないことになります。

 

同じく、南関東エリアからの出荷だと、九州お届けの注文は「翌日配送」と書いてあるのに、翌日に届きません。

しかし、配送時間指標では、通常サイズの1日以内お届け表記は70%を維持すればいいので、残りの30%に上記のエリアが収まるとなれば、当然プライムは続行します。

 

すると、プライムを満たしながらも、今回の配送時間指標の目的として発表している「ページ内に記載されたお届け予定を遵守すること」に大きく反します。

正確には、このセラー側がこの目的を叶えたくても、都道府県別設定が固定されている以上、守りたくても守れない地域が存在してしまうというのが本音でしょう。

北海道、沖縄、離島についても実は同様で、2日以内表記を守れず、お届けに3日以上かかるところも少なくないです。

 

2021年7月15日以降は、北東北と九州地域お届けのクレームが増えるのではないかと予測します。

都道府県を完全に固定させるということ、そしてマケプレ対象地域を選べないという、指標は前述したFBAでの空きの解消と、7月以降の運用結果によっては大きく見直される可能性が出てくるのではないでしょうか。