ワンデリバリー構想とは【楽天カンファレンス2019】【ECサイト運営】

本記事のテーマ

ワンデリバリー構想とは【楽天カンファレンス2019】【ECサイト運営】

本記事で得られる知識

2019年1月30日に行われた楽天カンファレンス2019で方向性が示された「ワンデリバリー構想」について解説します。

記事の前提

本記事はB2B並びにB2Cのネットショップ運営を前提とした送料設定に関する記事です。

1. ワンデリバリー構想とは

1-1. 送料無料ラインの全国統一(一定金額購入での送料統一)

ワンデリバリー構想は、数ある楽天店舗の送料をほぼ統一で○○円以上は無料という、送料無料を実現するとする構想です。

楽天主催の楽天カンファレンス2019で語られた、楽天という1つのモールで送料についての大きな改革を行う構想です。

1-2. 楽天独自配送ネットワークの強化

楽天はモールであって、楽天自体が商品を販売しているわけではないですが、FBAのような楽天が自社所有の倉庫を設けて発送代行を行っており、ここを基点に本格的に物流部門のてこ入れをしていくと発表しました。

1-3. 楽天ロジを利用した集荷・配送サービスの拡大

現在は一部の店舗・一部の地域に限定してますが、楽天倉庫を中心として、実際に商品の配送にまで手を伸ばすことを目指しています。

配送に手を伸ばすというのは、大和急便や佐川急便のように、実際にお客様の元まで商品をお届けする内容を含みます。

独自配送の強化は、数年前から楽天三木谷社長が昨今の配送に関する諸問題に対して懸念を表明したことから描いた構想であり、それを更に拡大したものとなります。

1-4. 今後の店舗からのヒアリングで実施予定・調整あり

あくまで構想であり、ここから4000店舗ある楽天の店舗からのヒアリングを通じて、具体的な実施内容と実施時期を定めて実行するとのことですが、ワンデリバリー構想を楽天の軸としての一番重要な方向性に位置づけていくということで、たくさんのハードルがあるとしながらも、われわれがイメージするよりも早い段階での実現に持っていく可能性があります。

2. ワンデリバリー構想の根拠

2-1. 6割以上が送料無料ラインを希望

楽天が実施した消費者調査によると、商品代金が安いと思っら送料で高くなったと不満を持っているユーザー層が56.2%おり、送料のスキームとして約64%のユーザーが、一定金額以上で送料が無料という表記のほうがいいと答えてることが分かりました。

2-2. メルカドリブレの成功例

楽天はお店が独自に送料を設定しており、いい表現でいうならば個性豊かな店が集まっていますが、これは逆の見方をすると、設定が店ごとに完全にばらばらです。

ですが、バラバラのお店が集まるモールで、一定金額を購入すると無料になる設定をモール単位で実施して成功した例として、南米で展開しているメルカドリブレを引き合いに、その重要性について熱く語っています。

南米の国家間(越境)の場合にどうかは記載がありませんでしたが、売上げが苦境に立たされていた中で、楽天と同じモール型のメルカドリブレが、全店舗の送料設定の統一をして、一定金額以上の購入で無料という設定にしたところ、設定する前年から今まで140%の成長を達成したことが分かりました。

メルカドリブレが実施した送料の全国統一での一部無料化を実現、成功したことで同じモデルである楽天でも勝算があると判断した形です。

3. ワンデリバリー構想の強み

3-1. 低価格の実現

ワンデリバリー構想の中では発送代行をひとつの柱としてます。楽天が用意した発送代行を利用することで、アマゾンのFBAをはじめ、ほかの発送代行よりも大幅なコストカットが可能だとしています

金額自体が、一般的にヤマト運輸は佐川急便のような運送業者の料金よりも安くなるため、コスト面での実現が十分可能です。

3-2. 配送物1つ1つの属性データを把握

楽天が独自の配送サービスを提供することがメリットである大きな理由は、商品の中身が「楽天で購入された商品である」と最初からデータとして分かっている点です。

大和運輸は佐川急便のように、個人への宅配ではあるものの、お届け先の情報が全くないために、全体の2割とも言われる不在・再配達のコストに繋がっています。

楽天が自社発送の商品を配送まで手がけることで、初めから購入者の属性が分かってるため、昼間にいなさそうな年齢・性別、夜でも配送が問題ないなどの情報を届ける前から理解してるため、不在・再配達を未然に防止しやすいというわけです。

これにAIが加われば、初めからその時間に最適なお届け先をデータが導き出してくれるため、人件費を大幅に抑えられることになります。

3-3. 中小企業の送料コストが下がる

発送代行というのは、人の受身的な人件費・急激な受注に耐えられる点において強く、作業負担が軽減されるわけではないのが一般的です。

更に中小企業が大手よりも少ない出荷実績で運送会社と契約しても、昨今では特に出荷量に応じた割引が聞きにくい状況となっています。

ですから、中小企業にとっては大手よりも少ない出荷量でも、ワンデリバリー構想における楽天倉庫・出荷・配送を利用することがコスト面でも有利であり、更に品質面でもアマゾンなどに対抗できる可能性があります。

3-4. 配送可能時間帯の拡大

既に購入者の属性がデータ上分かってるので、一般的な午前中指定や午後の5分類の時間帯での指定以外にも、対面ではない置き配や、深夜お届け、早朝お届けなど、お届け先に対する柔軟な発送体制を構築できるとしてます。

アマゾンFBAより安い

お届けものの中身とお届け先の属性が分かっているだけで大幅な効率化を実現できるので、発送代行にもかかわらず非常に安い価格設定を実現できることになります。

アマゾンが追随するためのたたき台として見ている可能性

最新のビジネスモデルというのは、成功する場合が多い時代ではありますが、課題を残す可能性も高いのが現実です。

後に続く業者が厳しいのが一般的ですが楽天の動向をじっくり見ながら、楽天がワンデリバリー構想を抱えた後に、GAFAの1つである資金が潤沢なアマゾンが更に改良した「ワンデリバリー構想・改」のような体制を後になって強いてくる可能性が十分にあります。ここまでくると楽手とアマゾンといった大手同士の競争になるので、既存の運送会社ではなくEC主導(=BtoC主導)の発送モデルが更に最適化されて、売る側買う側両方にとってのメリットを享受できる可能性が高いです。

4. ワンデリバリー構想の懸念

4-1. 楽天内での競合品は大量仕入れの大手に負ける

楽天以外の発送代行サービスの競合としては、明らかに楽天のほうが強みではありますが、もし楽天内での送料統一が実現すると、楽天内の店同士ではどうしても大量在庫を実現できる大きな店舗のほうが、個単位の利益が高くなるので、価格競争になると結局楽天内の大手が強いことを意味します。

4-2. 楽天ロジ利用時の検索結果の強化がなされないか?

ヒアリング次第では完全送料無料ラインの全国統一が厳しい可能性もありますが、いずれにせよ楽手倉庫・配送を利用するほうが検索結果や楽天内SEOに有利に働く可能性がある場合には、同じく楽天内での大手のほうが価格競争では強いことになります。

4-3. マルチチャネル的なものではない

現在のところ、楽天内での注文の発送・配送について言及してるので、アマゾンマルチチャネルのように、楽天以外の注文(アマゾン、自社、ヤフーなど)を楽天倉庫から発送するという部分については言及がありませんでしたので楽手外でのターゲットについては、店舗側として課題が残ることになります

4-4. 個人情報を悪用するスタッフが・・・・

初めから商品の中身に関する情報を、お届けモノ単位で把握できるというのは、いわば個人情報が箱単位で分かるともいえます。

例えば、中身の情報が分からないようになっているようで、送り状にお店の名前が書いてあるだけで、おおよその購買層が分かるわけですから、今以上の特定しにくいセキュリティをどこまで作れるかは大きな課題となるはずです。

最後に

まだまだ構想の段階での話にはなりますが、三木谷社長は今年中に楽天全店舗へのヒアリングを実施して、今年度中には行動に移すと述べていますので、来年には実施される可能性が高いです。

1年もあるようで1年後にはEC業界の構造が大きく変化する可能性があります。